ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート ILAC2025-8 2025 年 11 月 「中国の対ラテンアメリカ投資に変化: 「天然資源」開発から「新インフラ」と「公共インフラ」への移行」 桑山幹夫
【要旨】
本レポートは、中国のラテンアメリカ・カリブ(LAC)向け貿易、直接投資、開発金融、インフラ・プロジェクト投資契約の観点から、過去25年にわたるLACと中国との通商関係の変遷についての論考である。
中国は今世紀に入って LAC 諸国の貿易相手国として、その重要性を着実に高めてきている。 今後も、コモディティ中心の LAC の対中貿易の拡大が見込まれる一方で、 中国からの輸入の商品構成においてスマートフォン、自動データ処理機械、集積回路、乗用車や部品などの高技術の ICT 商品や自動車の比重がさらに高まると予測される。
投融資に関しては、2020 年代初頭まで活発に行われてきた中国の LAC 向け開発金融が枯渇するなか、かつて対外直接投資が一帯一路構想(BRI)を支えた金属・鉱物・鉱業開発向けの大型プロジェクトから、グリーンエネルギー、重要鉱物、電気自動車、ICT 機器やデバイス、コンピューティングインフラやフィンテックサービスなど、中国とって戦略的に重要な「新インフラ」分野へと投資セクターを厳選してきている。
インフラ投資契約では、エネルギー分野から公共インフラ(道路、空港、地下鉄、鉄道、港湾、ダム建設など)分野への移行と並行して、エネルギー分野内での化石燃料開発から再生可能エネルギー分野への移行が活発化している。
第II節では、両地域間の通商関係の変遷を、① 財(モノ)貿易、② 中国の LAC 向け対外直接投資(FDI) 、③ 中国の政策銀行による融資、④ インフラ・プロジェクト投資契約に分けて論説する。LAC の対中貿易については、貿易相手国・投資先国別、業種別に考察したえで、相互貿易の特異性や構造的問題を指摘する。中国の LAC 向け投資・融資については、天然資源開発向け大型プロジェクトから「新インフラ」産業や「公共インフラ」への移行に焦点を当てて分析する。
第III節では、中国との通商関係の深化が生産性を高めて社会経済格差を是正し、より包括的で持続可能な成長を実現するために、LAC 諸国の「低成長の罠」の脱出に対する中国の貢献度、また中国の対LAC
関与の今後の展望についても考察する。
キーワード: ラテンアメリカ、対中国貿易、対外直接投資(FDI)、開発金融、インフラ投資
| ファイル名(File Name) | ILAC2025_8.pdf |
|---|---|
| ファイル容量(File Capacity) | 1 MB |
| バージョン(Version) | 1 |
| 作成日(Published) | 2025年11月6日 |
| ダウンロード回数(Downloaded Numbers) | 66 回 |
| カテゴリ(Category) | ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート |
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